インターネットの掲示板やSNSで「世界一気持ち悪い人」と検索された際、表示される検索結果は決して1人の特定の人物に収束しません。画像検索の上位を占めるビジュアルを精査すると、まったく異なる出自と文脈を持つ3つの典型的なカテゴリーが、ネットユーザーのセンセーショナリズムによって意図的に混同されている実態が浮かび上がります。
第1の系統は、海外の通信社や大手メディアでも大々的に報道された「世界一不潔な男」ことイランのアモウ・ハジ(Amou Haji)氏です。半世紀以上にわたり一度も体を洗わず、土埃と煤煙にまみれたその異様な風貌は、ネット上で「閲覧注意」の代表格として幾度となく転載されてきました。
第2の系統は、自らの肉体を極限まで造り変えた「身体改造ギネス世界記録」の保持者たちです。全身をタトゥーで隙間なく埋め尽くしたラッキー・ダイヤモンド・リッチ氏や、頭部にインプラントで角を埋め込み数百箇所のピアスを施したロルフ・ブッフホルツ氏、さらには地球外生命体の容貌を目指して鼻や上唇を切除したアンソニー・ロフレド氏(通称:ブラック・エイリアン)などが、悪意あるまとめサイト等で同列に語られています。
そして第3の系統が、極めて稀な医学的症例である「樹状人間(ツリーマン症候群)」として知られたインドネシアのデデ・コサワ氏のように、重篤な疾患による身体の変容を好奇の目で晒された事例です。このように、「衛生観念の放棄」「自己表現としての身体改造」「難病による不可抗力」というまったく質の異なる3つの現実が、ネット空間の無秩序なアルゴリズムと刺激を求める言説によって「世界一気持ち悪い人」という暴力的な一語へと矮小化されているのが事の真相です。