マルファン症候群は、常染色体顕性(優性)遺伝の形式をとる遺伝性疾患です。両親のどちらかがマルファン症候群である場合、子どもへ遺伝する確率は50%(2分の1)となります。ただし、患者の約25%は家族歴がなく、受精卵の段階で新たに生じた突然変異(孤発例)によって発症します。
かつて1970年代頃までは、大動脈解離などの合併症により「平均寿命は30〜40歳代」と語られていた時代がありました。しかし、2026年現在の医療環境において、その悲観的な常識は完全に覆されています。
予後が飛躍的に改善した背景には、主に3つの医療的進歩が存在します。
- 早期画像診断の定着:定期的な心エコーやCT・MRI検査により、無症状のうちに大動脈の拡大スピードをミリ単位で追跡・把握できるようになったこと。
- 薬物療法の確立:β遮断薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を用いて血圧と血管へのストレスをコントロールし、大動脈の拡張を遅らせる治療が標準化されたこと。
- 予防的外科手術の進化:大動脈が危険な太さに達した段階で、破裂する前に人工血管へ置き換える予防手術(自己の心臓弁を残すデイビッド手術やベントール手術)が高水準で安全に行えるようになったこと。
適切な診断を受け、循環器専門医のもとで血圧管理と定期検診を継続していれば、現在では一般人口とほぼ変わらない天寿を全うすることが十分に可能となっています。