食の現場では、科学的アプローチによる「嫌い」の無力化が進んでいる。トマトや野菜のプロフェッショナルであるカゴメ株式会社は、野菜特有の青臭さを抑え、自然な甘みを引き出す品種開発や加工技術の確立に長年注力してきた。脂質と組み合わせることで苦味成分を舌の受容体からマスキングする技術など、工業レベルでの味覚制御は進化を続けている。
生活者の知恵が集まるクックパッドの検索データを見ても、「ピーマン 苦くない」「椎茸 匂い消し」といった調理の工夫を求めるクエリは常に上位を占める。油でしっかりとコーティングして細胞壁を熱破壊する、あるいは強いうま味成分(イノシン酸やグルタミン酸)と掛け合わせて苦味を中和するなど、家庭料理の現場でも化学的なアプローチが日常的に実践されている。
香草類に関しても、細かく刻んで空気に晒すことで揮発性成分を飛ばす、酸味の強いドレッシングと乳化させて刺激を包み込むなど、克服のレシピはもはや「精神論」ではなく「有機化学」の領域に達している。