刑事裁判の法廷では「被告人」と呼ばれるにもかかわらず、報道で被告と呼ぶ理由には、日本のメディアが長年培ってきた実務上の慣習と編集方針が存在します。
新聞やテレビなどの報道機関には、日本新聞協会や各放送局が定めるマスコミの呼称ルールが存在します。刑事事件の被疑者が起訴された際、報道各社は「〇〇被告人」ではなく「〇〇被告」と表記します。主な要因として、以下の3点が挙げられます。
1. 新聞の見出しにおける字数制限と簡潔性
限られた紙面やテロップの文字数において、「人」の1文字を省くことで情報をコンパクトに伝え、視認性を高める実務的要請があります。
2. 「呼び捨て」を防ぐ敬称的・中立的役割
かつて昭和中期の報道では、起訴された人物を呼び捨てで報道するケースも見受けられました。しかし、人権配慮や推定無罪の観点から「肩書き」として扱える呼称を統一する過程で、「〇〇被告」という形が定着しました。
3. 放送における音声の聞き取りやすさ
被疑者と容疑者の違いと同様に、音声で「被告人」と流すよりも「被告」とした方が、短く明瞭に視聴者へ届きやすいという音響・編集上の利点も考慮されています。
法曹関係者からは「民事の被告と混同を招くため刑事訴訟法通り『被告人』と表記すべき」という指摘が定期的に行われていますが、一般読者への浸透度や報道運用の利便性から、現在もマスコミ各社は「被告」の表記を継続しています。