今回の食中毒(細菌性食中毒)で最も議論を呼んだのが、「体に優しい無添加」「オーガニック」「砂糖控えめ」というコンセプトの皮肉な落とし穴だ。
食品化学の観点において、砂糖は単なる甘味料ではなく、食品中の水分を抱え込んで細菌の増殖を抑える「防腐剤」としての重要な役割を担っている。防腐剤や保存料を使わず、砂糖の配合を極限まで減らしたマフィンは、水分活性が非常に高く、微生物にとっては絶好の栄養源となる。
特に問題視されたのが、加熱しても死滅しにくい芽胞を形成するウェルシュ菌やセレウス菌などの細菌だ。一度加熱したからといって過信し、常温で長時間放置すれば、生き残った菌が爆発的に増殖する。「自然派」を追求するあまり科学的根拠を無視したレシピ設計が、毒素を生み出す引き金となった。