ネット上の情報や飼い主同士の口コミには、善意から発信されながらも医学的には危険を伴う誤解が少なくありません。
最大の落とし穴は、「吐いて喉が渇いているはずだから、水をたっぷり飲ませる」という対応です。嘔吐直後の胃粘膜は極度の充血と炎症状態にあります。そこに冷たい水を一気に流し込むと、胃壁の知覚神経が強く刺激され、迷走神経反射によってさらに激しい再嘔吐を引き起こします。飲んだ水分以上の胃液や電解質を吐き出してしまうため、脱水症状を急速に悪化させる結果となります。
また、「1回吐いただけだから大丈夫」という思い込みも危険です。急性膵炎の初期には、朝方に1回だけ黄色い液体を吐き、日中は比較的落ち着いているように見えるケースがあります。しかし体内では膵酵素が漏れ出し、自身の膵臓や周囲の脂肪組織を溶かし始める「自己消化」が進行しています。嘔吐が単発であっても、普段と歩き方が違う、呼んでも反応が鈍いといった微細な変化を見逃してはなりません。