華やかな熱戦の一方で、今場所も複数名の有力力士が土俵を去りました。公式発表では「右膝内側側副靭帯損傷」や「腰椎椎間板ヘルニア」といった傷病名が並びますが、現場の関係者取材からは、より根深い構造的な問題が浮かび上がってきます。多くの関係者が指摘する力士休場理由の真相は、10月の秋巡業から続く過密スケジュールと、現代力士の身体的限界の衝突です。
日本相撲協会が発表する年間スケジュールにおいて、本場所(年6場所・計90日)の合間には全国各地を回る地方巡業がびっしりと組まれています。スポーツ医学の専門家は次のように警鐘を鳴らします。
「体重150キロを超える巨体が、毎日のように新幹線やバスで長距離移動をこなし、硬い移動先土俵で稽古と取組を繰り返す負荷は計り知れません。特に近年の力士は筋力トレーニングによって筋肉量が増加している分、腱や靭帯といった関節組織への負担が限界点に達しています。十分なアクティブレスト(積極的休養)が取れないまま本場所に突入すれば、疲労骨折や靭帯断裂のリスクは跳ね上がります」
ある親方は匿名を条件に、「ファンサービスとしての巡業の価値は理解しているが、力士たちの身体が悲鳴を上げているのも事実。怪我を恐れて立ち合いが鈍り、結果として金星を配給したり途中休場に追い込まれたりする悪循環を断ち切るには、巡業日数や土俵の衝撃吸収構造の見直しが急務だ」と苦渋の胸中を吐露しました。伝統芸能としての興行と、トップアスリートとしての肉体保護のバランスをどう取るかという課題が、今場所の土俵下で浮き彫りとなりました。