多くの個人投資家が陥りがちな最大の誤解は、「PTSでついた株価は明日の東証寄り付き株価を完全に予告している」という盲信です。この認識は統計的・構造的に誤りです。
まず挙げられる盲点は、スプレッド(売買気配の価格差)の広さと実質コストです。東証では1円刻みで数十万株の注文が並ぶのに対し、PTSの夜間では最良気配値の間に数十円から百円以上の開きが存在することが珍しくありません。この環境で成行注文に類するアプローチを取ると、市場実勢から大きく離れた不利なレートで約定してしまい、翌朝の取引開始と同時に含み損を抱える原因になります。
さらに見逃せないのが、「アルゴリズムの不在と翌朝の再参入」です。昼間の東証では、ミリ秒単位で価格を平準化するHFT(高頻度取引業者)やマーケットメイカーのアルゴリズムが流動性を供給しています。しかし、夜間PTSにはこれらの流動性供給主体が限定的にしか存在しません。翌朝8時以降、海外機関投資家の注文や大手証券のアルゴリズムが一斉に板へ投入された瞬間、PTSで形成された価格帯は瞬時に修正され、全く異なる水準で寄り付くケースが頻発します。