『高校教師』で京本政樹が演じたのは、主人公・羽村と同じ高校に勤務する英語教師・藤村知樹である。表向きは品行方正で生徒からの信頼も厚い爽やかな人気教師。しかし、その裏の顔は教え子に対して執拗かつ狂気的な欲望を向ける冷徹な一面を持っていた。
当時、時代劇『必殺仕事人』シリーズなどで端正な二枚目スターとして不動の地位を築いていた京本にとって、この藤村役はキャリア最大の挑戦であり、同時に大きなリスクを伴う賭けでもあった。あまりに凄絶で道徳的タブーに踏み込んだ役柄は、一歩間違えればイメージの致命的失墜に繋がりかねない。
だが、京本が見せたアプローチは圧倒的だった。美しい容姿の裏に冷ややかな狂気を宿らせる独特の立ち振る舞い。静けさの中に滲み出る執着心。彼は藤村という人物を単なる「記号的な悪役」としてではなく、人間の底知れぬ業と美しさが表裏一体となった圧倒的な「怪役」へと昇華させてみせたのだ。