扇子を投げて的を落とす遊びの正式名称である「投扇興(とうせんきょう)」は、江戸時代中期の安永2年(1773年)頃、浅草の地で発祥したと伝えられています。一説には、宿屋で昼寝から目覚めた男が、そばにあった枕に止まった蝶(あるいは舞い落ちたイチョウの葉)に向かって手元の扇子を投げたところ見事に命中し、周囲から喝采を浴びたことが始まりとされています。
考案されるやいなや、身分を問わず熱狂的なブームが巻き起こりました。あまりの白熱ぶりに賭け事の対象となることも多く、江戸幕府から一時禁止令が出されたほどです。その後、ルールや作法が洗練され、芸妓が客をもてなす優雅な「お座敷遊び」の定番として定着しました。力比べではなく、指先の繊細なコントロールと落ち方の偶然性が生み出すドラマこそが、250年以上愛され続ける最大の魅力です。