象の鼻パークを訪れた多くの人が最初に抱く疑問が、「なぜ象の鼻という名前なのか」という点です。動物園や象の飼育施設があるわけではなく、その答えは1859年の横浜開港期にまで遡る土木技術の歴史に隠されています。
日米修好通商条約の締結に伴い開港した当時、この場所には「東波止場(イギリス波止場)」と「西波止場(税関波止場)」と呼ばれる2本の突堤が築かれました。当初は直線状に海へ突き出た形状をしていましたが、外海からの強い波浪が直接押し寄せるため、小舟での荷役作業や乗降が極めて困難になる問題が発生しました。
そこで慶応年間から明治初期にかけて、波の侵入を防ぐために東波止場が弓なりに湾曲した形状へと改修されました。このカーブを描く突堤を陸上や海上の高所から見下ろした際、その姿がまるで象の長い鼻のように見えたことから、当時の外国人居留民や港湾関係者の間で自然発生的に「象の鼻」と呼ばれるようになりました。これが現代に受け継がれる名称の起源です。
横浜市港湾局の公的記録によると、2009年の横浜開港150周年記念事業に伴い、この歴史的な遺構を復元・保存する再整備が行われ、「象の鼻パーク」として正式に開園しました。現在もパーク内を歩くと、明治初期の石積防波堤の遺構や、かつて物資を運んだ臨港鉄道の軌道跡が各所に残されており、歩くだけで近代日本の黎明期を感じ取ることができます。