1974年12月、東京・原宿の喫茶店「レ・コルテ」を拠点に結成されたクールス。リーダーの舘ひろしを筆頭に、副団長格の岩城滉一ら総勢21名で旗揚げされたこのモーターサイクルクラブは、当時の不良少年のステレオタイプを根底から覆す異質な存在でした。当時、世間を騒がせていた「カミナリ族」や黎明期の暴走族集団が、特攻服に身を包んでマフラーを改造したけたたましい爆音で暴走行為を繰り返していたのに対し、クールスが掲げた掟は「全員が黒の革ジャン、黒のパンツ、黒の大型バイク(ハーレーダビッドソンまたは漆黒のKAWASAKI・Z2)」という徹底した美意識でした。
彼らが活動拠点とした原宿界隈には、当時名を馳せていた凶暴な暴走族「ジェロニモ」の玉川雅已をはじめ、腕自慢の不良集団が頻繁に出入りしていました。当然のように日常的な小競り合いや縄張り争いの危機に直面したものの、クールスが残したクールス武勇伝の本質は、単純な腕力による制圧ではありませんでした。当時のストリートで目撃された彼らは、相手が数十人規模で威嚇してきたとしても決して取り乱さず、リーダー陣が単身で相手の頭(ヘッド)と対峙し、腹を割った対話と圧倒的な威圧感だけで事態を収束させたといいます。
警察白書や当時の社会面が記録する1970年代の少年非行データを見ても、集団抗争による凶悪事件が急増していた時代にあって、クールス本体が起こした重大な傷害事件の検挙記録は驚くほど見当たりません。暴力で相手を屈服させるのではなく、一分の隙もないスタイルと人間力で敵対勢力を沈黙させたことこそが、今日まで語り継がれるクールス原宿伝説の核心といえます。