豆もやしを茹でる際、料理研究家やプロの料理人が口を揃えて強調するのが「茹でている途中で絶対に鍋の蓋を開けてはならない」という鉄則です。
この工程の背景には、明確な食品化学のメカニズムが存在します。大豆には「リポキシゲナーゼ」という酸化酵素が含まれており、これが大豆内の不飽和脂肪酸と結びつくことで、特有の青臭い匂い(青葉アルコールやヘキサナールなど)が発生します。リポキシゲナーゼは80℃〜85℃以上の高温で熱変性して失活しますが、中途半端な温度帯(40℃〜70℃)に長くさらされたり、加熱中に蓋を開けて急激に蒸気を逃がし鍋内温度を下げてしまうと、酵素反応が活性化して青臭さが一気に定着してしまいます。
鍋の蓋を密閉した状態で一気に蒸気圧と庫内温度を高め、豆の芯まで瞬時に熱を行き渡らせることこそが、青臭さを消し去り澄んだ大豆の旨味を引き出す唯一の方法です。もし蓋を使わずに茹でる場合は、最初から最後まで完全に蓋を開けたまま沸騰状態を保つ必要がありますが、熱効率の観点からも「最初から最後まで蓋を閉め切る」調理法が最も合理的です。