ネット上の自動車コミュニティやSNSで頻繁に交わされる「ローンを払い終えても名義を変えておかないと車が売れない」という言説は、法的な観点から紛れもない事実です。道路運送車両法第13条において、自動車の所有権移転登録は法的所有者の承諾および移転関係書類の提出が義務付けられており、使用者の独断で車両を処分することは禁じられています。
自動車ローンで購入した車両は、購入代金を立て替えた信販会社や販売ディーラーが法的な「所有者」、代金を支払う購入者が「使用者」として車検証に登録されます。この所有権留保の解除は、信販会社側が能動的に陸運支局へ出向いて手続きしてくれるわけではありません。契約者が債務を完済した旨を証明し、解除書類一式の交付を請求して初めて、移転登録の権利行使が可能となります。
放置した場合の最大のリスクは、買い替えや現金化を急ぐ局面で訪れます。買取店に査定を依頼しても、所有権が第三者法人にある車両は即座に買い取ることができません。信販会社への残債照会、完済確認、担当部署からの譲渡書類の郵送取り寄せには、通常1週間から10日前後のタイムラグが生じます。その間に査定相場が下落したり、新車の納車時期がずれたりといった実害に直結するわけです。
さらに深刻なケースとして、長期間の放置中に販売会社が経営破綻や他社への吸収合併を経験していた場合、法人登記の閉鎖謄本や履歴事項全部証明書を法務局経由で遡って取得しなければならず、書類の回収だけで数ヶ月を要する事態に発展します。「走れるから今のままでいい」という先延ばしは、将来的に極めて重い時間的・金銭的代償を招く要因となります。