2024年3月、株式会社明治が下したチェルシー全フレーバー(バタースカッチ、ヨーグルトスカッチ、コーヒースカッチ等アソート含む)の出荷終了の通告は、菓子業界のみならず日本全国に大きな衝撃を与えました。明治の公式発表資料において示された理由は「市場環境や顧客ニーズの変化に伴う販売規模の低迷による収益性の悪化」という端的なものでしたが、その背景には長年蓄積された構造的な課題が存在していました。
関係者への取材や当時の決算関連データを紐解くと、残酷な数字が浮かび上がります。チェルシーの年間売上高は、2002年度の約25億円をピークに右肩下がりの下落を続け、2022年度には約5億円にまで落ち込んでいました。 20年余りで売上が約80%蒸発していた計算になります。かつては遠足のおやつや旅行のお供として絶大な支持を誇ったブランドも、近年の流通現場では棚落ち(定番棚からの撤去)が相次ぎ、実質的な販売機会を失っていました。
この長期低迷の根本には、菓子消費におけるパラダイムシフトがありました。現代の菓子市場、とりわけポケット菓子ジャンルでは、咀嚼感を重視したハードグミや手軽にリフレッシュできる錠菓(ミントタブレット)が急成長を遂げています。口の中で数分間舐め続ける必要があるハードキャンディは、「食べるのに時間がかかる」「途中で噛むと歯に詰まりやすい」といった理由から、現代人のタイパ(タイムパフォーマンス)志向と徐々に摩擦を起こしていったのです。