なぜ自動車メーカーは、ドライバーが自由にライトを消せない設計へとシフトしたのでしょうか。その発端は、夕暮れ時や薄暮時間帯における歩行者事故の撲滅を目指した道路運送車両の保安基準(第32条)の改正にあります。国連の協定規則(UN-ECE R48)に準拠する形で、日本国内でも新型車へのオートライト機能搭載が完全義務化されました。
導入初期に猶予されていた継続生産車への適用期間も満了を迎え、現在公道を走る高年式車においては、周囲の照度が1,000ルクス未満(日没前の薄暗い時間帯や立体駐車場など)になると、2秒以内に自動でロービームが点灯するシステムが完全に根付いています。かつてのオートライトは「便利なオプショナル機能」に過ぎませんでしたが、現行法では「ドライバーの過失による無灯火を防ぐ命綱」へと位置づけが格上げされた形です。
法規が求める核心は、走行中にドライバーの手動操作で前照灯を意図的に消灯させない点にあります。この基準を物理的に担保するため、自動車各社は従来の物理的な固定式OFFスイッチを全廃し、手を離すと自動的にAUTO位置へスプリングで戻る「モメンタリ式スイッチ」を採用しました。夕暮れ時の視認性向上により、高齢歩行者などが巻き込まれる重大事故は統計的にも抑制傾向を見せているものの、現場のドライバーには「自車の意志で消せない不自由さ」として摩擦を生み出しています。