藤岡弘、氏の名前を目にした際、誰もが一度は「なぜ最後に読点『、』があるのか」と引っかかるはずです。単なる画数合わせの姓名判断や、奇をてらったギミックと捉えられがちですが、その背景には生死の境をくぐり抜けてきた男の極めて崇高な思想が宿っています。
この改名が行われたのは1984年、主演を務めた日米合作アニメ映画『SF新世紀レンズマン』の記者会見の場でした。当時の手記や会見記録によると、藤岡氏は改名の真意について次のように公言しています。
「昔の武将は一度名を捨て、点をつけて新しい名前にし、決意を新たにした。自分はまだまだ未熟であり、道半ば。『我いまだ完成せず』という意味を込め、初心に立ち返って自分を見つめ直すために読点を打った」
日本語の文法において、句点「。」は文章の終わりを告げるピリオドを意味します。それに対し、読点「、」は文章の継続を意味し、思考や行動が未来へ向けて連綿と続いていくことを示します。「終止符を打つことなく、立ち止まりながらも永遠に自己鍛錬を続ける」という覚悟。さらに、国際舞台へ進出するにあたり「日本発信の精神、黒潮のように力強く立ち向かうサムライの魂を忘れない」という志が込められた一画なのです。