プレミア化の激化に対し、蔵元や特約店は手をこまねいているわけではありません。現在、業界全体で転売を根絶するための極めて高度な対策が講じられています。
テクノロジーと運用による転売対策の進化
近年導入が進んでいる転売対策には、以下のようなものがあります。
- QRコード・NFCタグによる個体識別トレーサビリティ:新政酒造などを筆頭に、ボトル一本ごとにユニークな個体番号を付与。どの特約店から誰に出荷されたかを追跡可能にし、オークション等に出品された場合は特約店契約の解除も含めた厳格な対処が行われます。
- 購入時の「シリアル剥がし」や「キャップ開封」:店頭販売時にその場で外装箱のシリアルナンバーシールを剥がす、あるいは目の前でキャップの封印テープに切れ目を入れることで、未開封コレクションとしての転売価値を無力化する取り組み。
- 空き瓶回収・飲食店専用流通:飲食店で提供された空き瓶を特約店が回収することで、空き瓶に安価な酒を詰め直す「偽酒詐欺」を防止。
ネット通販・オークション購入に潜む「致命的な品質劣化リスク」
ネットの誤解として最も深刻なのが、「高額なプレ値を払えば、自宅で最高品質の酒が味わえる」という思い込みです。日本酒、とりわけ無濾過生酒や繊細な吟醸酒は、マイナス5℃から5℃以下の徹底した冷蔵保管(遮光)が義務付けられます。
フリマアプリやネットオークションに出品されている転売品は、常温の室内や普通便の輸送に晒されているケースが少なくありません。熱劣化や日光臭(オフフレーバー)が発生した日本酒は、蔵元が意図したフレッシュな風味やアロマが完全に破壊され、単なる酸味の抜けた濁った液体に成り下がります。数万円を支払って手に入るのが「劣化した残骸」であるリスクを、消費者は強く認識する必要があります。