SNSや動画プラットフォームの普及に伴い、数年前からブームとなったのが「自宅に生ハムの原木を置く」というライフスタイルです。「生ハム原木のある生活」というフレーズとともに、キッチンに鎮座する巨大な豚の脚は多くの消費者の憧れを集めました。しかし、スペイン生ハム口コミ評判を深掘りすると、理想と現実の間にある生々しい摩擦が浮き彫りになります。
大手通販サイトの購入者レビューやコミュニティの声を精査すると、賞賛の嵐のすぐ隣に「買って後悔した」「途中で腐らせて廃棄した」という悲痛な叫びが散見されます。
現場取材で見えてきた失敗の第1要因は、生ハム原木切り方の難しさです。生ハムの塊は生肉のように柔らかいものではなく、乾燥して革靴の靴底のように硬くなった外皮や黄色い酸化脂に覆われています。これらをトリミング(掃除)し、赤身部分を向こう側が透けて見えるほど極薄にスライスするには、専用の細長いフレキシブルナイフと高度な刃物の扱いが求められます。厚切りになってしまった生ハムは塩辛さが際立ち、顎が疲れるだけの干し肉と化してしまうのです。
本場スペインには、生ハムを切るためだけの国家資格が存在します。それがコルタドール技術を持つ専門職人「マエストロ・コルタドール」です。彼らは骨の構造をミリ単位で把握し、部位(バビージャ、マサ、プンタ)の脂と赤身のバランスを計算しながら均一に削ぎ落とします。素人が家庭用の包丁や付属の安価なナイフで挑んだ場合、最初の数枚で心が折れ、切り口がガタガタになって乾燥を早めてしまうケースが後を絶ちません。
第2の要因は、日本の高温多湿な気候です。スペインの乾燥した気候と異なり、日本の夏場や梅雨時期に常温放置された原木は、カビの異常増殖や脂の酸化(嫌な油臭さへの変化)に晒されます。原木を購入して最後まで美味しく消費できた成功者たちの共通点は、「切り口を切り取った白い脂で覆い、ラップで空気を遮断する」「15度から20度前後の冷暗所を確保できる」「家族や友人と2〜3ヶ月以内に消費し切る計画性がある」という厳格な管理体制を維持できた層に限られています。