藁焼きといえば、言わずと知れた高知県の郷土技法だ。一瞬で800度から1000度という圧倒的な高温に達する乾燥藁の火力は、食材の表面を一瞬で焼き固め、独特の煙の燻香を纏わせる。これまで肉や魚介類が中心だったこの技法に「みかん」を投入するという破天荒な発想が生まれたのは、高知市内の小さな居酒屋での試みがきっかけだったとされる。
柑橘の皮に含まれる精油成分(リモネン)は、高温の直火と燻煙に晒されることで劇的な変化を遂げる。ツンとした酸味がカドの取れた芳醇な香りに変わり、果肉の糖度が熱によって一気に凝縮されるのだ。焼くことで皮ごと丸ごと食べられるようになり、皮のビター感と果肉の甘みが絶妙なコントラストを生み出す。この「焼きみかん」の先にある新境地が、日本人の味覚を揺さぶっている。