給付付き税額控除の代表格として世界的に知られるのが、アメリカのEITC(Earned Income Tax Credit:勤労所得税額控除)です。1975年に導入されたこの制度は、単なる困窮者救済ではなく「働く人を支援する」という強いインセンティブ設計が組み込まれています。
アメリカのEITCは、年収ゼロの人には給付されず、労働収入が増えるにつれて控除・給付額が一定ラインまで増加していきます。これにより、福祉受給に頼るよりも「少しでも働いて稼いだ方が手取りが増える」状況を作り出し、貧困層の労働参加率を劇的に引き上げる成果を上げました。
しかし、米国国税庁(IRS)の公表データによると、EITCには深刻な副作用も存在します。
- 過誤受給と不正申告:年間給付総額の約20〜25%相当(数十億ドル規模)が、申告ミスや虚偽申告による不適正支給として計上されている。
- 複雑怪奇な申告要件:子供の居住実態や扶養関係の立証が複雑で、本来受給資格がある低所得層の約2割が申告を諦めている。
アメリカの事例は、税務当局が給付実務を兼ねるモデルにおいて、制度が精緻化すればするほど現場の事務破綻と不正リスクが跳ね上がる現実を浮き彫りにしています。