晩年、彼女が情熱を注いだのが、クラシックの名曲に日本語の歌詞を乗せて歌うクラシック・クロスオーバーという新しいジャンルだった。マイクを遠ざけてホール全体に声を響かせる驚異的な発声法は、たゆまぬ努力の賜物であった。
中でも彼女の代名詞となった「アメイジング・グレイス」の神聖な歌声には、聴く者の心を揺さぶる特別な祈りが込められていた。自らのルーツであり、常に葛藤の対象でもあった父親への感謝と許し、そして愛。その深い感情が、あの透明感あふれるハイトーンボイスに圧倒的な説得力を与えていたことは疑いようがない。