Q1:翼状針を用いて採血を行う場合、なぜ凝固スピッツの前にダミー管が必要なのですか?
A1:翼状針の延長チューブ内には約0.3〜0.5mLの空気が存在します。凝固検査用のスピッツは、クエン酸ナトリウム液と血液の比率が厳密に「1:9」でなければ正確な凝固時間を測定できません。チューブの空気がスピッツ内に吸入されると、規定の採血量に達する前に陰圧が失われ、血液量不足によって抗凝固剤が相対的に過剰となり、PTやAPTTが異常延長してしまいます。そのため、血液培養がない場合は、最初にダミー管(破棄用のプレーン管や他のスピッツ)にチューブ内の空気を引き込み、血液が針元まで満たされたことを確認してから凝固スピッツを接続する必要があります。
Q2:採血後の転倒混和を「激しくシェイク」してはいけない医学的理由は何ですか?
A2:スピッツを激しく振ると、強い物理的剪断力(せんだんりょく)によって赤血球の脆弱な細胞膜が破壊され「溶血」が発生します。赤血球の内部には血漿の数十倍ものカリウムやLDH(乳酸脱水素酵素)、ASTが存在するため、これらが血清・血漿中に流出することで検査データが偽高値を示し、患者の真の病態が覆い隠されてしまうからです。混和は気泡の移動を利用し、ゆっくりと優しく上下を反転させるのが鉄則です。
Q3:なぜ血糖スピッツ(フッ化ナトリウム)は必ず最後の方に採血するのですか?
A3:フッ化ナトリウムは赤血球がブドウ糖を消費する代謝経路(解糖系)の重要酵素「エノラーゼ」を強力に阻害する薬剤です。この阻害作用は極めて強力かつ広範であるため、針先を介して微量でも生化学スピッツに移行すると、ALPやアミラーゼなど体内の主要な酵素活性測定系を広範囲に阻害し、測定結果を壊滅させてしまうためです。