ふたりの出会いは、昭和のテレビドラマ史に残る劇的なアクシデントが引き金でした。長渕剛 馴れ初めの現場となったのは、1986年に放送されたTBS系の名作ドラマ『親子ゲーム』です。長渕演じる元暴走族の中華料理店主・保坂良介と、志穂美演じる恋人・三宅麻衣のリアルで荒々しい掛け合いは、当時の視聴者に強烈なインパクトを与えました。
ドラマの撮影中、ふたりが激しく取っ組み合う大喧嘩のシーンで予期せぬ事態が発生します。感情が激高した演技の最中、志穂美悦子の左手が固いテーブルの角に激突し、小指の付け根を骨折する重傷を負ってしまったのです。現場が凍りつくなか、長渕は取り乱すことなく即座にタクシーを手配し、自ら病院へ付き添って手当てが終わるまで懸命に寄り添い続けました。
親子ゲーム 共演時のこの事故をきっかけに、ふたりの距離は急速に縮まります。「怪我をさせた責任を一生背負う」という長渕の愚直なまでの情熱と男気、そして普段は誰にも弱音を吐かないトップ女優の孤独を包み込んだ優しさが、志穂美の心を揺さぶりました。翌1987年、映画『男はつらいよ 幸福の青い鳥』での再共演を経て、ふたりは電撃結婚を発表。志穂美は女優業を完全に引退し、家庭に入る道を選びました。当時、アクション界の至宝と呼ばれたスターの電撃引退は、世間に大きな衝撃を与えたのです。