紅しょうがの結成は2014年10月のことです。当時、二人の間には明確な「先輩と後輩」という芸歴の隔たりが存在していました。稲田美紀はNSC大阪校33期生(2010年入学)、対する熊元プロレスは35期生(2012年入学)と、稲田が2期先輩にあたる間柄でした。
当時、稲田は高校の同級生と組んでいたコンビ「小蔕(こへた)」を方向性の違いから解散し、ピン芸人「おさがり」としての活動を余儀なくされていました。次なる相方を探すなか、若手芸人がひしめき合う劇場「よしもと漫才劇場」の前身である5upよしもとのオーディションや楽屋で、稲田の視線を釘付けにしたのがピン芸人時代の熊元プロレスだったのです。
当時の熊元は、舞台上でがむしゃらに体当たり芸を披露する荒削りな存在でした。しかし稲田は、その規格外のフォルムから放たれる圧倒的な愛嬌と、一瞬で場の空気を掌握する天性の華を見逃しませんでした。関係者への取材や当時の回想録によると、稲田は周囲に「あの子、絶対に売れる」「舞台に出てきただけで面白い」と熱っぽく語っていたといいます。
「この子の隣に立ちたい」と直感した稲田は、先輩という立場を振りかざすことなく、熊元に「うちとコンビ組んでみいへん?」と単刀直入に声をかけました。後輩にとって2期上の先輩からの直談判は青天の霹靂であり、熊元は当初「まさか自分が」と強いプレッシャーを感じたものの、稲田の揺るぎない眼差しと熱意に背中を押され、運命のタッグが産声を上げました。