住居の床材や熱環境との相性を無視したマット設置は、住宅資産価値そのものを損なう大損害に直結する。特に注意を要するのが「床暖房」と「床材のコーティング仕様」だ。
第一に、床暖房を導入している住宅では、必ずダイニングテーブル下マット床暖房対応の耐熱試験をクリアした製品を選定しなければならない。耐熱温度が80℃〜90℃以上に設定されていない非対応マットを使用すると、床暖房の熱によってPVC樹脂が軟化し、フローリングに張り付いて剥がれなくなる事故が発生する。また、熱がマット下に閉じ込められることで床材の含水率が急激に変化し、板の反りやひび割れを誘発する。
第二に、無垢材(オイル塗装・蜜蝋ワックス仕上げ)のフローリングを使用している場合、PVCなどの非通気性シートの設置は原則として避けるべきである。無垢材は周囲の湿度に合わせて水分を吸放出する「呼吸」を行っている。表面をビニールで密閉すると内部の湿気が出口を失い、短期間で木材が黒ずんで腐食する原因となる。
さらに、一般的な複合フローリング(合板+突板または化粧シート)であっても、安価なPVCマットに含まれる「可塑剤(樹脂を柔軟にする化学薬品)」がフローリング表面のウレタン塗装に浸透・移行する「可塑剤移行」のリスクが存在する。一度可塑剤が浸透して化学変色を起こした床面は、専門業者による研磨と再塗装を行わない限り元には戻らない。