日本の出版業界には、表現の自由を担保しつつ青少年の健全な育成を守るための明確な自主規制メカニズムが存在します。出版倫理協議会や各出版社の編集部内には一般漫画における性的描写のガイドラインが細かく規定されており、雑誌の対象読者層によってその許容範囲は明確に分けられています。
少年誌(週刊少年ジャンプ、週刊少年マガジン、週刊少年サンデーなど)においては、中高生以下の読者を強く意識しているため、直接的な性被害描写が描かれることは極めて異例です。悪意を持った加害行為を匂わせる場合でも、影やシルエットによる暗示、服の破れなどの間接的示唆、あるいは未遂の段階で味方が救出する展開に抑えることが編集方針として徹底されています。
一方、成年読者をメインターゲットとする青年誌(週刊ヤングジャンプ、ヤングマガジン、月刊アフタヌーンなど)では、人間社会の暗部や生々しい暴力の描写が一定程度許容されます。ただし、無制限に許されているわけではありません。法律(刑法175条のわいせつ物頒布等)に抵触しないことはもちろん、性器の直接描写は完全に排除され、加害行為そのものを快楽的に肯定するような演出は厳しく制限されます。編集部は「その描写が作劇上どうしても必要不可欠であるか」を精査し、過剰な露出や露骨な描写にはトーン処理や暗転などの修正を指示しています。