日本国内に生息する生物の中で、最も長い標準和名を持つ動物として学会記録に刻まれているのが、ヒメ目ホソミオキエソ科に属する深海魚「ウケグチノホソミオナガノオキエソ」です。カタカナ表記で実に22文字におよぶこの名称は、2007年に日本魚類学会の学会誌で正式発表された際に大きな話題を呼びました。
この長大な名前は、決してふざけて命名されたわけではありません。生物の標準和名は、既存の近縁種と明確に識別できるよう、形態的特徴を厳密に足し算していく命名手法が取られます。本種の場合も、以下のようにパーツを細かく分解するとその論理的な成り立ちが浮き彫りになります。
- ウケグチ(受口):下顎が上顎よりも前方に突き出た口の形状
- ノ(の):接続詞
- ホソミ(細身):体が細長くスレンダーな体型
- オナガ(尾長):尾びれの付け根から後方が極端に長い特徴
- ノ(の):接続詞
- オキエソ(沖鱛):ベースとなる魚類グループ「オキエソ」の仲間
高知沖の水深数百メートルの深海から採取された標本を精査した研究陣は、すでに存在していた「ホソミオナガオキエソ」と極めて酷似しながらも、明確に「受け口」である決定的な差異を発見しました。その分類学的な正確性を期した結果、言葉を重ねざるを得ず、日本一長い標準和名が誕生したというわけです。