「毎日トイレクイックルや水拭きシートで壁を拭いているのに、なぜか臭いが消えない」という悲痛な相談は後を絶たない。大手衛生陶器メーカーが実施した飛散調査データによると、男性が立って小用を足した場合、わずか1回の排尿で約2,000滴以上もの微小な尿飛沫が半径1メートル四方に飛散していることが実証されている。さらに、女性の着座排泄や、男性が座って小用を足す「座りション」であっても、便器内の水面への着水バウンドや温水洗浄便座の水流ミストによって、便座の隙間から左右の壁へ微細な飛沫が確実に到達しているのだ。
問題は、その尿ハネを「水拭き」で対処しようとする行為にある。水拭きを行うと、壁紙の表面に付着していた尿素や皮脂が水分に溶け出し、ビニールクロスの奥深くにある紙基布や接着糊の層へと毛細管現象で吸い込まれてしまう。これが現場で「汚れの押し込み現象」と呼ばれる悪循環の正体だ。
壁紙内部に浸透した尿成分は、空気中に浮遊するマイクロコッカス属などの皮膚常在菌やカビ菌のエサとなり、ウレアーゼという酵素によって激しいアンモニアガスへと分解・揮発し続ける。つまり、表面をいくら水で拭いても、壁紙の内部が「アンモニア製造工場」と化している限り、悪臭が消えることは決してないのだ。