専門店の厨房と家庭のキッチンにおいて、決定的な差を生み出しているのは「とろろの粘度管理」と「つゆのなじませ方」です。家庭で作る際、多くの人がすりおろした長芋をそのまま茹でたそばの上に乗せ、上から市販のめんつゆを回しかける手順を踏んでいます。しかし、この方法では芋に含まれる水分がつゆを弾いてしまい、麺をすすったときにつゆととろろが分離してしまいます。
名店と呼ばれる蕎麦処では、すりおろしたとろろに対して少量の冷たい一番だしや返しを少しずつ加え、あらかじめ味を馴染ませながら泡立てるようにすり鉢で伸ばすという工程を欠かしません。このひと手間によって、とろろ自体が均一な旨味をまとい、そばの細い麺肌にしっかりと吸着するクリーミーなテクスチャーが完成します。
さらに、麺の温度ととろろの温度を完全に同調させることもプロの鉄則です。冷やしなら器ごとキンキンに冷やし、温かい一杯ならだし汁の熱でとろろがダマにならないよう計算された注ぎ方を実践しています。