「左様」の本当の意味とは、純粋な肯定と同意にほかならない。文法的に見れば、「左様」に丁寧の助動詞「ございます」を接続した「左様でございます」は、極めて正当な敬語表現である。二重敬語のような文法破綻もなく、文化庁の『敬語の指針』に照らし合わせても何ら瑕疵はない。しかし、ビジネスマナー教育の現場では、このフレーズの使用に対して慎重な姿勢を崩さない専門家が多い。なぜ文法的に正しい言葉が、ビジネスの現場でリスクとなり得るのか。
最大の理由は、その響きが醸し出す「過剰な距離感」と「機械的な冷たさ」にある。電話口のカスタマーサポートや高級ホテルのコンシェルジュなど、極めて高い格式と非日常性が求められる場であれば「左様でございます」は完璧な威力を発揮する。一方で、日常的な社内コミュニケーションやスピード感が重視される商談で多用されると、相手に対して壁を作り、感情を遮断したような印象を与えてしまう。
ビジネスの文脈において、状況に応じたスマートな言い換えを身につけておくことは必須のリテラシーだ。
・相手の意見に全面的に同意する場合:「おっしゃる通りでございます」「誠にその通りです」
・事実関係を認めて受け止める場合:「承知いたしました」「かしこまりました」
・相槌として話を促したい場合:「はい」「さようでございましたか(※使い過ぎに注意)」
特に注意したいのは、疑問形である「左様ですか?」の多用だ。相手に投げかけると、どこか他人事で冷淡な、あるいは相手を軽くあしらうようなニュアンスを含んで響いてしまう危険性を孕んでいる。無用な誤解や失礼を避けるためには、「さようでございますか」と丁寧に受けるか、「左様で」に固執せず「そうでいらっしゃいますか」「さようでございましたか、承知いたしました」と血の通った言葉を添える配慮が欠かせない。