日本国内で「青・黄・黒・緑・赤=5大陸」という説がこれほど深く浸透した背景には、日本の教育文化とメディア報道の歴史的構造が存在します。
昭和中期から平成初期にかけて、児童向けの百科事典や学習雑誌、テレビの教養番組などでは、「五輪の輪は5大陸を表す。黄色は黄色人種のアジア、黒は黒人居住地域のアフリカ……」といった解説が、わかりやすい比喩として無批判に繰り返されてきました。複雑な歴史的経緯(白地を含めた全国家の国旗の網羅)を説明するよりも、「色と地域を1対1で対応させるラベリング」の方が直感的で記憶しやすかったという教育現場側の事情があります。
心理学や認知科学において、人間は複雑な全体像よりも「明快な分類体系(カテゴリー化)」を好む傾向があります。しかし、この安易なカテゴリー化は、肌の色と大陸を結びつけるようなステレオタイプを生み出す危険性を孕んでいました。クーベルタンが1910年代の段階で、特定の肌の色や地域への偏見を避けるために「すべての国旗の色を含ませる」という抽象的かつ洗練されたアプローチを取っていたことは、現代のダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)の観点から見ても極めて先駆的であったと言わざるを得ません。