インターネット上で「慰霊の森」を検索すると、今なお「行ってはいけない理由」「日本最強の心霊スポット」といったオカルトめいた言説が目につきます。これらの噂の真相はいったい何なのでしょうか。
ネット上に氾濫する怪談は、以下のような典型的な類型に集約されます。
- 「興味本位で行くと体調を崩す、霊を連れて帰ってしまう」
- 「333段の階段でうめき声が聞こえる、写真を撮ると無数のオーブが写る」
- 「白い服を着た集団が森の中に立っている」
調査報道の観点から断言しますが、これらは凄惨な事故の事実を娯楽として消費するために後付けされた悪質な都市伝説に過ぎません。1990年代後半、匿名掲示板「2ちゃんねる」のオカルト板などで「三大心霊スポット」と根拠なく格付けされたことが発端となり、恐怖体験を誇張するネットミームとして定着してしまったのが実情です。
では、なぜ「行ってはいけない」と警告されるのでしょうか。そこには現実的な2つの明確な理由が存在します。
第1の理由は、「遺族への配慮と追悼空間の冒涜防止」です。この場所は作り話のテーマパークではなく、162人の市民が無残に命を落とし、遺族が血の涙を流しながら建立した墓所同等の神聖な場所です。夜間に騒ぎ、肝試しを行う行為は、刑法上の建造物侵入や軽犯罪法違反に問われる明確な違法行為であり、人間としての倫理に反します。
第2の理由は、「物理的な危険性」です。現場は北上山地の深い原生林に囲まれており、ツキノワグマの生息域です。夜間は街灯が一切なく完全な漆黒となる上、333段の急な石段は湿気や落ち葉で滑りやすく、滑落事故の危険が極めて高い環境にあります。つまり、「呪われるから行ってはいけない」のではなく、「倫理的にも物理的にも危険極まりないため、夜間や冷やかしで立ち入ってはならない」というのが真実です。