電子レンジ調理に対して「肉がパサつく」「硬くなって縮む」という苦手意識を持つ人は少なくありません。しかし、山本ゆりさんの鶏もも肉レシピは、そうした先入観を根底から覆します。その背景には、緻密に計算された調理科学のアプローチが存在しています。
一般的な電子レンジ加熱では、マイクロ波が食材の水分を激しく振動させて発熱させるため、肉の表面から急激に水分が奪われがちです。山本ゆりさんの手法では、「フォークで皮と身にしっかりと穴を開ける」「砂糖・みりん・酒をベースにしたタレを全体に絡めてから加熱する」というプロセスが徹底されています。
砂糖やアルコール分には優れた保水性があり、加熱中に肉の筋繊維が急激に収縮するのを防ぐ効果があります。さらに、耐熱容器の中で鶏肉から染み出た肉汁と調味料が一体化し、蒸気となって肉全体を包み込む「セルフスチーム効果」が生まれるため、驚くほどふっくらとした食感に仕上がります。
また、加熱時間を「一気に通す」のではなく、「庫内での余熱蒸らし」を計算に入れた加熱設定になっている点もプロの技です。余熱を利用して肉の内部温度をじわじわと65〜70℃の最適帯に到達させることで、たんぱく質の熱変性によるパサつきを極限まで抑えています。