患者が最も切実に抱く疑問が、「外転神経麻痺は治るのか」「どれくらいの期間で元の視界に戻るのか」という点です。結論から述べると、麻痺の原因によってその経過と予後は明確に分かれます。
糖尿病や高血圧などの微小血管障害に起因する虚血性麻痺の場合、外転神経麻痺の自然治癒期間はおおむね発症から8週間〜12週間(約2〜3ヶ月)で回復の兆候が現れ、3〜6ヶ月以内に約70〜80%の患者がほぼ完全に自然寛解します。神経線維そのものが断裂しているわけではなく、血流不全による一時的な伝導障害(脱髄など)であるため、微小血管の再疎通や側副血行路の発達とともに神経機能が自律的に再生するためです。
しかし、すべてのケースで完全回復が望めるわけではありません。外転神経麻痺の後遺症と真相について、以下の臨床要因が回復率を左右します。
- 頭部外傷や完全麻痺:強い外力による神経断裂や高度の牽引損傷では、自然回復率は40〜50%程度まで低下します。
- 発症後6ヶ月の壁:発症から6ヶ月が経過しても眼球の可動域や複視に全く改善傾向が見られない場合、神経の不可逆的な変性や、長期間動かなかったことによる内直筋の短縮(拘縮:こうしゅく)が完成してしまい、自然治癒は見込めなくなります。
- 不完全回復と残余複視:正面視では問題なく1つに見えるものの、強い側方注視時のみ物がダブって見える「周辺部複視」が軽度の後遺症として残る場合があります。