映画『マリー・アントワネット』の評価を不動のものにしたのが、視覚と聴覚の圧倒的なオリジナリティです。イタリアの巨匠ミレーナ・カノネロが手掛けたマリー・アントワネット 映画 衣装ドレスは、第79回アカデミー賞で見事に衣装デザイン賞を受賞しました。
カノネロは、ソフィア・コッポラから手渡されたラデュレのマカロンの箱にインスピレーションを受け、パステルピンク、ピスタチオグリーン、ペールブルーといった色彩で数百着に及ぶドレスを特注制作しました。靴は世界最高峰のシューズデザイナーであるマノロ・ブラニクが担当し、リボンやレースで装飾された無数のハイヒールが画面を埋め尽くします。その靴の陳列シーンの中に、意図的に1足のラベンダー色のコンバース・オールスターが紛れ込ませてある演出は、公開当時世界中で大きな話題を呼びました。彼女が現代の若者と何ら変わらない「ただのスニーカー世代のティーンエイジャー」であることを視覚的に刻印する、鮮烈なアナクロニズム(時代錯誤)の手法です。
さらに映画界に衝撃を与えたのが、マリー・アントワネット 映画 挿入歌の選曲です。18世紀の宮廷絵巻であるにもかかわらず、流れるのはバッハやモーツァルトではなく、80年代のポストパンクやニューウェイヴでした。オープニングを飾るギャング・オブ・フォーの『Natural's Not in It』、王妃が豪遊を極めるモンタージュで鳴り響くバウ・ワウ・ワウの『I Want Candy』、仮面舞踏会の熱気を彩るニュー・オーダーの『Ceremony』、そして夜明けの空気を切り裂くザ・キュアーの『Plainsong』。
既存の時代劇の常識を覆すこれらの楽曲は、古典の重々しさを払拭し、若者たちの爆発するエネルギーと、その直後に訪れる虚無感を完璧にシンクロさせています。