歩行時に片足立ち(単脚支持期)になると、体重の大部分がその支持脚にかかります。このとき、正常な身体機能であれば、支持側の殿部外側にある中殿筋が強く収縮し、反対側(浮いている側=健側)の骨盤が下に落ちないよう水平に保ちます。
しかし、支持脚側の中殿筋が正常に働かないと、重力に負けて反対側の骨盤が下方へ傾いてしまいます。この現象を静止立位の検査ではトレンデレンブルグ徴候と呼び、歩行中に連続して現れる状態をトレンデレンブルグ歩行と定義します。
この異常歩行メカニズムの背景には、単純な加齢による筋力低下だけでなく、複数の器質的・神経的な要因が潜んでいます。
代表的な基礎疾患として挙げられるのが変形性股関節症です。関節軟骨の摩耗や骨棘形成によって股関節の適合性が崩れると、筋肉のレバーアーム(力のモーメント)が変化し、十分な筋力を発揮できなくなります。また、小児期からの先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)の後遺症や、手術・外傷に伴う上殿神経麻痺によって中殿筋への神経伝達が遮断されることも直接的な引き金となります。