日本庭園の定番樹木でありながら、なぜ「庭に植えてはいけない」と警告されるのか。造園の現場調査や一般住宅の庭木管理トラブルの事例を精査すると、明確な4つの要因が浮き彫りになります。
第1の理由は、ツゲノメイガ(ツゲノ害虫)による壊滅的な食害リスクです。初夏から秋にかけて発生するこの幼虫は、わずか数日から1週間程度でつげの木の葉を食い尽くし、樹木全体を茶色い枯死状態へと追い込みます。気がついたときには枝に蜘蛛の巣のような糸が張り巡らされ、大量のフンと幼虫が群がる光景にショックを受ける家主が後を絶ちません。
第2に、日頃の手入れを怠ると樹冠の内部から枯死しやすいという性質があります。つげの木は葉が密生しやすいため、外側の刈り込みだけを繰り返していると、内側に太陽光と風が届かなくなります。その結果、内部の小枝が枯れ上がり、一度強剪定をすると丸裸の茶色い幹だけが露出して元に戻らなくなるトラブルが頻発します。
第3に、成長スピードの遅さと剪定の難しさが挙げられます。本物のつげ(ホンツゲ)は非常に成長が遅く、形を整え直すのに何年もかかります。逆に、生垣によく使われるイヌツゲは放っておくと枝が暴れ、定期的な刈り込みを強いられます。「ローメンテナンスな庭」を求めて植えた層にとって、この維持管理の手間が大きな負担となっています。
第4に、「葉が黄色くなる」「突然枯れる」といったトラブルの見極め難さです。つげの木が枯れる原因には、日照不足、過湿による根腐れ、土壌のアルカリ化、ハダニやツゲノメイガの寄生など多岐にわたります。原因を特定できずに放置した結果、庭の景観を著しく損ねてしまい「最初から植えなければよかった」と後悔するパターンに繋がっています。