鬼殺隊に入隊してきた弟・玄弥に対し、実弥は「テメェみたいな愚図、弟でも何でもねェ」「鬼殺隊を辞めろ」と罵倒し、時には目を潰そうとするほどの暴力を振るいました。一見すると冷酷非情な兄の振る舞いですが、その裏にあったのは「玄弥にだけは危険な鬼殺隊を辞め、どこかで家庭を持って平穏に天寿を全うしてほしい」という、痛切なまでの自己犠牲愛でした。
家族を奪われた実弥は、残された唯一の弟である玄弥を何としても生き延びさせたいと願っていました。自分が鬼をすべて倒して地獄へ行く代わりに、玄弥には光の当たる世界で生きてほしい――。心理学的に見れば、自らの命を顧みない「極端な防衛機制と愛情の反転(反動形成)」が、あの苛烈な態度となって表出していたのです。
無限城の決戦において、黒死牟の刃に倒れ瀕死となった玄弥を抱きしめた実弥は、かつての暴言をかなぐり捨てて「神様どうか、弟を連れて行かないでくれ」と涙ながらに懇願します。鬼を喰らう体質によって崩壊していく玄弥から「兄ちゃんが笑って、幸せになってほしかった」と感謝を告げられたシーンは、本作における屈指の名場面として多くの読者の涙を誘いました。