ネット検索で「マルファン症候群 有名人」と入力すると、数多くの著名人や歴史上の人物の名が候補に現れます。リンカーン元米大統領やバイオリニストのパガニーニ、作曲家のラフマニノフなどがその代表格です。さらに現代の日本において高い関心を集めているのが、ミュージシャンの米津玄師氏に関するトピックです。
これについてメディアでの発言や過去のインタビュー記録を丹念に検証すると、本人が雑誌の対談や手記等で「自身にマルファン症候群の疑いがあること」に触れた過去の事実が確認できます。手足の長さや長身、繊細な骨格といった外見的特徴と自身の特異な存在感を重ね合わせる形で語られたエピソードが、ファンの間で拡散され、病気の認知拡大につながった側面があります。
しかし、患者会や当事者コミュニティ(SNSや相談窓口)の現場取材からは、著名人の名前が一人歩きすることに対する複雑な胸中も聞こえてきます。
「米津さんのような天才アーティストと同じ病気だと知って前向きになれたという若い当事者もいます。一方で、『手足が長くてスラッとしているだけでしょ?』『クリエイターに多いカッコいい個性』と表面的に受け止められ、いつ大動脈が裂けるかわからない恐怖や、激しい胸郭の痛みを理解してもらえない孤独感に悩む声も根強いのです」(難病支援に携わる臨床ソーシャルワーカー)
病気を過度にロマンチシズム化することなく、日々の血圧管理や重い荷物の運搬制限、妊娠・出産時の重大なリスクといった「当事者の直面するリアル」に目を向ける視点が求められています。