EML4-ALK融合遺伝子の発見者として世界的に知られる間野博行氏の存在を抜きにして、日本のがんゲノム医療の劇的な進化を語ることはできない。彼が初代センター長として指揮を執ったがんゲノム情報管理センター(C-CAT)には、全国津々浦々の検査機関から日々、患者のがん遺伝子プロファイルと詳細な投薬・臨床経過データが集積されている。
この巨大な情報インフラは、日本医療研究開発機構(AMED)の戦略的支援をバックボーンとして稼働している。何十万例もの遺伝子バリアント情報が、AIによるアノテーション処理を経て、臨床医が即座に参照可能な「C-CAT調査結果報告書」として還元される。間野氏が標榜する「一人の患者のデータが、明日の見知らぬ患者の命を救う」という循環構造は、もはやスローガンではない。世界最高水準のクオリティを誇るこのデータベースこそが、日本における創薬と個別化医療の加速器として機能しているのだ。