下痢を発症した際、最もやりがちな失敗が「日本から持参した市販の下痢止め(ロペラミド塩酸塩など)」をすぐに飲んでしまうことだ。この行為は症状を劇的に悪化させる恐れがある。
細菌性やウイルス性の感染性腸炎において、下痢は侵入した毒素や病原体を体外へ排出しようとする生体防御反応である。強力な下痢止めで腸の動きを無理に止めてしまうと、毒素が腸内に長くとどまり、腸管粘膜の破壊や毒素の血中移行(敗血症リスク)、巨大結腸症などを引き起こす危険性がある。
また、単なる水あたりではなく、原虫が原因となるアメーバ赤痢に感染している可能性にも警戒が必要だ。通常の大腸菌による下痢とアメーバ赤痢には以下のような明確な違いがある。
- 通常の大腸菌性下痢:水のような便、突発的な腹痛、微熱。数日間の水分補給と安静で徐々に回復傾向に向かうことが多い。
- アメーバ赤痢の典型症状:便にイチゴジャム状の粘液や血液が混じる(粘血便)、しぶり腹(便意があるのに出ない、排便後もスッキリしない)、持続的な下腹部痛、発熱。
粘血便や高熱、激しい脱水症状が見られる場合は、自力での治癒を試みず、速やかに現地の総合病院やクリニックを受診して検便検査を受ける必要がある。現地医師の処方による適切な抗菌薬(シプロフロキサシンなど)や抗原虫薬(メトロニダゾールなど)の投与が不可欠だ。