2000年1月にリリースされ、累計売上293.6万枚という日本の歴代シングルランキング(オリコン調べ)で3位を誇る世紀の超名曲『TSUNAMI』。第42回日本レコード大賞を受賞し、国民的アンセムとなったこの楽曲が、長きにわたりライブやメディア演奏から姿を消していた背景には、深く重い歴史的経緯が存在します。
ことの発端は、2011年3月11日に発生した東日本大震災でした。巨大な津波が東北沿岸部を襲い、未曾有の被害と多くの尊い命が失われた現実を前に、桑田佳祐およびメンバー、スタッフ陣は苦渋の決断を下します。「被災された方々の心情を鑑み、曲名を耳にすること自体が深いトラウマを呼び起こす可能性がある」という配慮から、同曲の演奏を事実上、自発的に封印したのです。
ネット上では一時、「事務所の圧力説」や「権利上のトラブル」といった根拠のない憶測が飛び交いましたが、これらは完全な誤解です。桑田本人は自身のラジオ番組や手記において、楽曲そのものへの愛着と同時に、表現者が背負うべき「社会に対する責任と祈り」について誠実に言及してきました。
震災から年月を経た2020年代以降、被災地での復興イベントやファンからの温かい声援、そして時間の経過とともに「痛みを癒やす名曲として再び聴きたい」という声が全国から寄せられるようになりました。2023年の茅ヶ崎ライブ、そして2025年以降のメモリアルな節目において、同曲は慎重に、かつ真摯な祈りを込めて再びセットリストへと迎え入れられました。「言葉を奪われた悲劇」を乗り越え、大衆の祈りと共に生き続ける『TSUNAMI』の姿は、音楽が時代と共にどう呼吸すべきかを示す象徴的な実例と言えます。