現在、洋食シーンでは興味深い地殻変動が起きている。半世紀以上の歴史を誇る老舗のレシピを敬承しつつ、現代の調理科学を取り入れた「進化系洋食」が食通たちの間で大きな話題を呼んでいるのだ。とりわけ注目を集めているのが、看板メニューであるデミグラスハンバーグの進化だ。従来の牛豚合挽き肉の配合を見直し、黒毛和牛の熟成赤身肉とブランド豚の脂を独自の比率でブレンド。低温調理で肉汁を閉じ込めたのち、炭火や鉄板で一気に香ばしさを纏わせる手法が定着しつつある。
ソースもまた、劇的な深化を遂げている。牛骨や牛すじ、香味野菜を焦がす寸前まで焼き上げ、1週間以上かけて濾しと煮込みを繰り返す漆黒のデミグラスソース。そこに発酵調味料やビターチョコレートを隠し味に加え、奥行きのある苦味とコクを両立させた新時代の味わいが誕生している。日本の食文化が育んできた「旨味の重層構造」が、一皿のハンバーグの中に極限まで凝縮されているのだ。