物語は、ハンドボール部に所属する中学生の少女・安海琉花(あづみ るか)が、夏休み初日に部活でトラブルを起こし、居場所を失うところから始まります。両親の不仲に心を閉ざしていた琉花は、父が勤務する水族館で、ジュゴンに育てられたという不思議な少年「海」と、その兄である「空」に出会います。彼らは常人離れした身体能力を持ち、海の中の生き物たちとテレパシーのように心を通わせる力を持っていました。
時を同じくして、世界各地の海で「巨大な火の玉(隕石)の落下」や「海洋生物の異常行動」「ジンベエザメをはじめとするクジラ類の湾岸集結」が発生。海洋学者ジムや、海の民の知恵を継承するデデが見守る中、空は自らの身体の限界を悟り、宇宙から飛来した隕石を琉花に託して光の中に消滅します。残された海と琉花は、地球規模で巻き起こる現象の中心地――すべての海洋生命が集う「誕生祭」の海域へと導かれていきます。
本作が「難解」と受け止められる最大の理由は、一般的なハリウッド的三幕構成(葛藤・対立・解決)や因果関係のロジックをあえて排除し、「体験型アートフィルム」としての構造を徹底している点にあります。五十嵐大介氏の原作が持つアニミズム(万物への霊性信仰)や東洋哲学、最先端の天文学が渾然一体となっており、登場人物のセリフによる説明ではなく、視覚と聴覚の奔流によって観客の感覚に直接訴えかける演出が採られているためです。