メディアで頻繁に混同されるのが「オネエタレント」と「ドラァグクイーン」という言葉の違いです。両者の区分を正しく理解することは、ドラァグカルチャーの美学を味わう上で極めて重要な視点となります。
オネエタレントとは、日本のテレビ番組制作の中で便宜的に生まれたタレントジャンルの一つであり、主に女性的な話し方(オネエ言葉)を用いる男性タレント全般を指す包括的な俗称です。ここには本人の性自認(トランスジェンダー女性、ノンバイナリーなど)や性的指向(ゲイ、バイセクシャルなど)が複合的に内包されています。
対してドラァグクイーン(Drag Queen)は、性自認や性的指向そのものを指す言葉ではなく、「誇張された女性性を纏ってパフォーマンスを行う表現者・舞台芸術家」を意味します。ドラァグ(Drag)の語源には諸説あり、シェイクスピア演劇の時代に女性役を演じた男性俳優がドレスの裾を引きずっていたこと(Dressed Resembling A Girl / Dragging the dress)に由来するという説が有力です。
つまり、ドラァグクイーンにおける女装は日常的なアイデンティティの開示ではなく、「過剰な美とアイロニーで既成概念を揺さぶるアートフォーム」です。素顔の日常とステージ上のアバターを明確に切り分けるプロフェッショナリズムこそが、ドラァグクイーンの根幹に存在しています。