現在、ジュエリーショップやタトゥースタジオの現場において、フルール・ド・リスはどのように受容されているのでしょうか。シルバーアクセサリーを愛好するユーザーや国内外の彫師への取材、ネットコミュニティの動向を追うと、世代やカルチャーによる明確な温度差が浮かび上がります。
シルバーギークの間で絶大な支持を集めるのが、アメリカの高級ジュエリーブランドクロムハーツが展開する「BSフレア(BS Fleur)」です。国内直営店や中古市場でもクロス(十字架)やダガー(短剣)と並び不動のトップ3に入る人気を誇ります。愛用歴15年のコレクター男性(40代)は次のように語ります。
「クロスだと宗教色が前に出すぎて敬遠する人もいますが、フレアは中世の気品とロックの攻撃性が絶妙に同居している。かつて罪人の焼印だったというダークな逸話すら、反骨を重んじるストリートカルチャーの文脈ではむしろ魅力的な深みとして受け止められています」
一方で、欧米圏でのタトゥー(刺青)事情には繊細な側面もあります。ニューオーリンズなどフランス植民地文化が色濃い地域では街のシンボル(NFLニューオーリンズ・セインツのロゴなど)として市民に熱愛されている反面、一部のヨーロッパ諸国やカリブ海沿岸のコミュニティでは「奴隷制度の記憶」や「犯罪組織のサイン」と結びつけて警戒する声もゼロではありません。海外渡航を控えたタトゥー愛好家が図柄を選ぶ際、歴史的コンテクストをあらかじめ把握しておくことは極めて重要です。