手のひらの黒い病変が良性か悪性かを肉眼でスクリーニングする際、世界各国の皮膚科臨床でゴールドスタンダードとして用いられているのが「ABCDE基準」と呼ばれる5つの観察ポイントです。この基準に照らし合わせることで、危険な初期症状を自宅でも客観的にチェックできます。
第一の「A(Asymmetry:非対称性)」は、病変の中心に仮想の線を引いたとき、左右または上下の形が一致しない状態を指します。良性のほくろはほぼ円形や楕円形で対称的ですが、メラノーマは細胞が無秩序に増殖するため、いびつに歪んだ形状を示します。第二の「B(Border:境界の不明瞭さ)」は、ほくろの縁がギザギザしていたり、毛羽立ったように周囲の正常皮膚へ墨汁が滲み出しているような様相を呈しているかどうかが観察基準です。
第三の「C(Color:色の不均一性・多彩性)」は極めて重要な判別要素です。良性のほくろは均一な茶色や黒色をしているのに対し、悪性黒色腫の初期症状と特徴としては、一つの斑点の中に「濃い黒、薄い茶色、赤み、灰白色、青みがかった色」などがまだらに混在します。メラニンを作る癌細胞の深さや密度のばらつき、局所的な免疫反応による退縮が色むらを生み出すためです。
第四の「D(Diameter:直径)」における境界線は、直径6mm以上のほくろであるかどうかが明確な危険水域の目安です。新品の鉛筆の消しゴム(直径約6mm)を当ててみて、それをはみ出すサイズであれば、急速な細胞分裂が起きている疑いが濃くなります。そして第五の「E(Evolving:病変の変化)」こそが最大の決定打です。形、大きさ、色調が数週間から数ヶ月単位で変化している場合や、病変部からの出血、かゆみ、浸出液を伴う場合は、迷わず専門医の診察を受ける必要があります。