2009年、JR難波駅直結の複合商業ビル「マルイト難波ビル」の3階に鳴り物入りでオープンしたジュンク堂書店難波店。売場面積約1,400坪、蔵書数およそ150万冊という規模は、当時のミナミ地区において間違いなく最大級のメガブックストアでした。しかし、オープンから11年が経過した2020年8月7日、多くのファンに惜しまれながら営業を終了しました。
公式発表資料および当時の出版業界動向を精査すると、閉店の決定打となった背景には主に3つの構造要因が存在していました。
第一に、テナント賃貸借契約の期間満了と更新コストの壁です。大型商業施設における長期契約の満了期を迎えるにあたり、広大なフロアを維持するための固定賃料と売上のバランスがシビアに再評価されました。超大型店舗は集客力を持つ反面、坪あたりの収益効率が低下すると経営を急激に圧迫します。
第二に、JR難波駅・湊町エリアの歩行者動線における孤立性が挙げられます。地下鉄御堂筋線・千日前線・南海電鉄が集まる「なんばの中心繁華街」から西側に位置するマルイト難波ビルは、地下道で直結しているとはいえ、日常的な回遊ルートからやや外れていました。目的買いの専門書ユーザーには重宝されたものの、ふらりと立ち寄るライト層の流入が伸び悩んだ点は否めません。
第三に、EC(ネット通販・電子書籍)の急速な普及とライフスタイルの急変です。医学書、理工書、人文科学書といったジュンク堂の強みである専門書領域において、オンライン購入や電子ジャーナルへの移行が加速。そこへ2020年初頭からの外出制限が追い打ちをかけ、広大な実店舗を維持するビジネスモデル自体の見直しを迫られた形となりました。