熊本が「火の国」と呼ばれる理由には、大きく分けて「地球科学的な阿蘇山の存在」と「神話・古代史に刻まれた怪火伝説」という2つの強固な柱が存在します。一般的な観光ガイドでは世界屈指のカルデラを誇る阿蘇中岳のダイナミックな噴煙が強調されがちですが、歴史学的なアプローチでは古代伝承の存在感を無視することはできません。
熊本県内に残る数多くの伝承や公的記録を照合すると、この地を統治した古代豪族「火君(ひのきみ / 火国造)」の勢力や、有明海・八代海で観測される自然発火のような光の現象が、中央政権に強烈なインパクトを与えたことがわかります。大地から噴き出す火(火山)と、夜の海上に揺らめく火(不知火)。この2つの「火」が重なり合った結果、熊本は名実ともに火の国として日本の歴史にその名を刻むことになりました。